前回④の続きから
先生から「ブレンドできたらこれにフレーバーのエッセンスを2種類加える。好きなの嗅いで選んで。」と言われた。
私はえ?フレーバー?これに付けるのか?と思った。
せっかく様々な種類でブレンドをしたのに、2種類のエッセンスも入れたら元のハーブやスパイスの良さが消えてしまうのでは?と不安が募った。
そんな私の不安をよそに、先生が早く選べと言わんばかりにこちらを見つめてきた。
私は、ハーブの系統に合わせたオイルを選び、エッセンスの混ぜ方を教えて頂いた。
エッセンスを入れるときも同様に計算するらしく、多く入れすぎると素材の味が無くなるとのこと。
先生には今回の授業を通して、私が人工的なフレーバーが苦手ということを周知してもらっていたから、何も言わずとも「これも授業だから我慢してくれ」と先に言われてしまった。
私は苦笑いしながらエッセンスを混ぜ合わせた。
エッセンスが全体に馴染むまで2日はかかるらしく、その場でテイスティングは出来なかった。
テイスティングしないと聞き、安心していたのは束の間だった。
先生が紙の上に数種類の茶葉を広げ出した。
「今度は、この茶葉にフレーバーを付けてみよう。好きな3種類のフレーバーを選んでくれ。」
と、先生が数十種類のフレーバーエッセンスの原液を目の前にして仰った。
「このフレーバーエッセンスもちゃんとテイスティングしてみなさい。」と
いたずらっ子のようにニマニマと笑った先生がいた。
私はえー!?っと思い、びっくりしてこの原液を?と、まじまじと見てしまった。
すると先生は、
「本物のフルーツ果汁や植物のオイルを使用しているから、
そんなに変な味はしないぞ。
ただし、とんでもなく甘いから少しだけにしておきなさい。
原液がどんなに甘くても紅茶などに吹きかけたら、
この甘味は香りだけになるんだ。」
私は、恐る恐るスプーンにフレーバーの原液をたらし、口の中に運んだ。
いざ口に含むと、あまりの甘さにびっくりしてしまい、首がつりそうになった。
喉の奥を刺激するような強い甘みを感じた。
若干フルーティーにしたかき氷のシロップを薄めずに飲んだような感覚だった。
思わず「甘ぁ…」と目を見張りながら日本語が漏れた。
先生は私の様子を見ながら、笑いをこらえるのに必死そうにしていた。
味はともかく、私が思っていたより自然なフルーツやお花の香りがした。
この状態ではかなり香りも良いのに、なぜ紅茶にフレーバーを噴射すると
お菓子のような風味になってしまうのか不思議でたまらなかった。
お水を飲みながら、香りで酔いそうになりながらも、
なんとか全てのフレーバーをテイスティングすることが出来た。
この中からフレーバー3種類選ぶの?!なぜ1種類じゃないだろう。
3種類も混ぜてしまったら、この強烈な香りも味もケンカしてしまうのでは?
と考えていた。
すると先生が現れ、不意に
「1種類だとフレーバーが弱すぎるから、
どのフレーバーティーも何種類ものフレーバーをミックスして
作っているんだ」と私の考えを見透かすように仰った。
そうなんだ、なるほど。納得しながら、どうにもケンカしないようになんとか
3種類選び先生に「これにします」と報告した。
「タイカ、さっき柑橘系のが気に入ったように見えたが、紅茶に合わせるのは
この3種類でいいんだな?」と先生に不思議そうに聞かれた。
私は「味的には確かにこのライムのフレーバーが一番口当たりが良かったです。
しかし、ここにあるフレーバーの中で系統が似ているものが、
この3種類しかなかったのでこれらを選びました。」と伝えた。
先生はびっくり驚きながらも納得したように、うんうんと頷いていた。
「さて、これからブレンドする割合を計算するのだが、
タイカが計算すると長丁場になるから、私がやってあげよう。」
と、パパっと計算しながら苦笑していた。
「タイカは計りを準備して、これを0.02g入れて、これを0.04g…」
と指示を受けながら、スポイトで手を震わせながら量っていく。
量ったエッセンスを茶葉と混ぜ合わせる。
すると先生はお湯とテイスティングカップを準備しだした。
私がえ?今テイスティングするの?と疑問に思っていると、
「ハーブやスパイスに比べて、紅茶だけの方がフレーバーが早く馴染む。
何日も置いてしまったら、香りが逃げてしまうから紅茶の場合は、
フレーバーを付けたらこの場でテイスティングをするんだよ」と仰った。
そして実際にテイスティングをしてみると、
柔らかく、口の中を刺激するような甘味もなく、本当に3種類いれたのかと
思うほど中途半端なブレンドティーが完成した。
私が何とも言えない顔でいると、先生がテイスティングをしてくださり、
「この2種類の香りはするが、3つ目はきれいさっぱりいなくなったな。」と
ガハハハッと笑っていた。
今まで、私が作っていたブレンドティーはあくまで自然のハーブやスパイスのみを使用した、体にやさしいブレンドティーだった。
今回ティーマスターになるための授業で、初めてフレーバーの原液を目にした。
原液だけでのテイスティングと紅茶やハーブ・スパイスと混ぜた時の、
風味、香りの違いを学び得たことは、これからのブレンディングに役経つ知識となった。
しかし、今後も紅茶専門店ディンブラのブレンドティーでフレーバーティーが出てくることは無いと思う 。
※人工的なフレーバーティーが悪いと言いたいわけではないので、ご理解ください。ただ、私の体には人工的な香りを受け付けることができないのである。
まだ続きます。